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【対談】

「ママだからあきらめる」のではなく、「ママだから戦略を練る」 東大生向けキャリア授業のコースディレクターと考える「ワーキングママのキャリア戦略」

【2020.11.04】

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稲田:ここからは、キャリアのために今何ができるか、より具体的なアクションを考えていきたいと思います。

――キャリアのために、今、何ができるか


渡辺さん:理想のキャリアを手に入れるために何ができるか。力をつけるために「まずは資格」と思う方も多いかもしれませんね。ただ、その資格を取ることが、自分のゴールに近づくために本当に役立つのかはよく考える必要があります。日本の資格試験は特に難しく、勉強するにも莫大な労力が必要ですし、年に1度の試験に失敗したらまた1年を棒に振ることになってしまいます。

無事合格したとしても、転職時にそれほど有利にならないことも多く、採用選考の実態を見ていても費用対効果に見合う資格はそれほど多くはありません。もちろん、「監査業務をしたいから公認会計士にチャレンジする」といったような話は別です。その仕事へ就くために法令で定められ、必須とされている資格であれば、がんばって取得するしかありません。ただ、いわゆる箔付けとして考えているような場合には、その資格を取ることで自分の理想のキャリアに近づけるのかは1度立ち止まって考えてほしいと思います。

さて、ここまで転職によるキャリア形成の話をしてきましたが、“起業”というキャリアもあります。女性の場合は特に“起業”が有力なキャリアになると考えています。自分のやりたいことにぴったりな仕事を探すのではなく、自分でつくってしまうという方法ですね。「起業=たくさんの社員を雇う」または「上場」などをイメージする方も多いですが、個人事務所的な企業もたくさんあって、今の時代はそんなに難しいことではありません。

親しいクライアント数社と好きな仕事をして、フリーランスや個人事業主として自分1人で起業することもできます。インターネットを活用すれば大きな初期投資も必要ありませんから、コンテンツサイトを運用するビジネスなどは気軽にできます。自分でコーディングができなくてもノーコードできれいなホームページを作れるサービスもありますし、ITが苦手だからといって恐れる必要もありません。起業は、自分が好きなことをテーマにできる、時間的な自由度が高い、収入的なリターンも期待できるなど、メリットが多いと思います。

私たちは、コンコードベンチャーズというソーシャルスタートアップへ出資・支援する事業も行っていますが、最近は結婚している女性からの起業相談が増えていますね。


稲田:私自身もmogを起業したのですが、何より経営を自分事として考えられるようになりましたね。前職では組織の一部を担っているだけだったのが、起業してからはビジネスをどう回していくか、全体を俯瞰して考えるようになったので。これは経営が自分事にならないと分からない部分だなと。そしてもし今後またサラリーマンに戻っても大きな財産になると感じています。


渡辺さん:その通りだと思います。経営者の気持ちや苦労が分かるので、起業した後でまたサラリーマンに転身して活躍される方は多いですね。ただ「いきなり起業なんて無理でしょ」と感じる方もいらっしゃると思います。いきなり起業しなくても、そこに向けて準備をする期間だと考えて転職をしてもいいんです。将来起業したい方から、どうキャリアを考えたらいいかご相談いただく機会も多いですが、今すぐではなく、最終的に起業を成功させるためのキャリア設計法も存在します。

私の場合は、起業することを考えていたので、新卒で大手企業に入らずに、若いうちから経営の勉強ができる経営コンサルティングの仕事を選びました。当時の学生としては珍しい部類だったでしょう。新規事業立ち上げのプロジェクトを数多く経験できたことは、大変役立ちました。

また、業界経験を積むことも大切です。たとえば、教育業界で起業しようと思うのであれば、まずは教育業界での経験を積む。業界知見を身につけられるのはもちろんのこと、その業界の問題や顧客が持つ真のニーズなどは、実際に働いてみないと分からないものです。このような経験があると、比較的スムーズに起業することができるでしょう。

ただし、転職するにしても、起業するにしても、価値ある経験を積ませてもらうわけですから、在職した企業にはしっかりと貢献し、恩返しをすることは大切にしてほしいと思います。


稲田:私も前職で女性向け転職サービスの新規立ち上げをして、そこから飛び出して起業したので、うなずきながら聞いていました。リスクなく、この業界はここに絶対チャンスがあるということが把握できたからこそ、会社を飛び出すことができたと思います。


渡辺さん:そこが重要ですよね。職務経験として実体験を積むと本当のニーズが分かります。机上でいくら精緻に分析しても、適切な事業計画はつくれない。実際にその業界で働き、苦労した経験がベースとなった事業の方がうまくいきます。

稲田:本当にそうですね。渡辺さんはなぜ起業しようとお考えになったのですか?


渡辺さん:実は中高生のころ、将来のことを考える中で、“人生相談”を仕事にしたいなと思うようになりました。ただ、商社や銀行といった会社はあるけど、人生相談業という会社はなさそうなので、自分で人生相談の会社をつくるしかないと。そういう意味であくまで起業は手段ですね。そして、まずは経営のことを学びたいと思って、新卒で経営コンサルティング会社に入りました。そこで5、6年働いて、どういったかたちで“人生相談業”をするか考えたときに、エグゼクティブ向けのコーチングやリーダーシップ開発なども考えたのですが、1番イメージに近いと感じたのがキャリアコンサルタントでした。その後7年ほど人材紹介会社で働いて、2008年に今の会社を設立しました。

稲田:中高生のころからすでに起業を考えていたんですね!そもそも、なぜ人生相談だったのですか?


渡辺さん:自分が好きなことって何だろう、嫌いなことって何だろうと中高生のころに分析していた時期がありました。友人たちと人生を語り合うのが何より楽しくて、自分が好きな要素を含んでいるのが人生相談だと思ったのです。実は、この時の分析方法が、先ほどのお話した「好き嫌い分析」のベースとなっています。

稲田:学生のころから、ご自身の好きと嫌いを明確に把握して、それを踏まえたうえでキャリア戦略を立てていらっしゃったんですね。キャリアのご支援をしていて、“Will、Can、Must”の中ではWillを1番大事にしてほしいという思いがあるのですが、なかなか思い切れない方もやっぱり多くて。私自身も育休中に悩みましたね。このまま人事でいくのか、でもやっぱり事業をつくりたい、でも子育てしながらそんなリスクを負うことはできない…って。育休中ずっともじもじして。

でもある日「もじもじしていてもしょうがない、動こう」と、乳飲み子抱えながらスタートアップの会社を20社くらい訪問して「今こんなこと考えているんですけどどうですか?」って聞いて回りました。そのとき感じたのが、ビジネスモデルがどうこうではなくて、とにかく楽しくて。私、やっぱりこうやってお客さんのところを回ってサービスつくっていくのが好きなんだと気づいたんです。その気持ちが今の原動力になっています。

キャリアというと何か答えがあるような気がして、分かりやすい資格に走ったり、年収を上げるためにどこの会社にいったらいいか相談したり。そんなふうに、他人任せなすごろくのような人生はもったいないと感じますね。


――キャリア戦略に、もっと感情の要素を入れていい


渡辺さん:私も、Will、Can、Must 3つの中でWillが1番大切だと思います。先ほどの“好き嫌い分析”は、最重要であるWillを掘り下げて自己分析する手法です。そして、「好き」も大切なのですが、同じくらい「嫌い」も大切なんですよね。一般に知られるWill、Can、Mustの分析には、この視点が抜けています。私は「大量に暗記する」とか、「上司にこびを売った者勝ち」といったことを「嫌い」の軸として持っていました。これを何に使うかというと、何か選択肢が提示されたときにノックアウトファクターとして使うのです。選択肢に好きな要素がたくさん入っていたとしても、先ほどの嫌いな要素が入っているものは絶対に選ばないようにするといった具合です。

新卒のときに中小企業向けの経営コンサルティング会社からも内定をもらいました。将来起業しようと思っていた私にはぴったりの選択肢でした。ところが、内定後の面談である役員とお会いした時にマズいと感じました。「キミが渡辺くんかー聞いちょるよ。ワシが鍛えちゃるばい!」と。横に同席している年上の優しい人事部長さんに対しても「こんなこともやってないのか。バカかお前は!」とずっと罵倒している。これは絶対やばいと(笑)。例のノックアウトファクターが入っていたので辞退しました。


稲田:分からないまま入社しないで良かったですね(笑)。


渡辺さん:後に社会人になってから、その会社はパワハラで有名だったことを知りました。キャリアについてクリアに考えることはもちろん大事ですが、そこに感情の要素も遠慮なくきちんと入れた方がよいのです。物事をロジカルに考えることはベースとなりますが、そこで起きている現象や定量的なことだけから考えるのでは不十分です。そこに人間が介在している以上、人間の気持ちも並行して考えなければ、自分も含めた関係者がハッピーになりません。「自分は何が好きで、何が嫌いなのか」を明確にしておくことが大切なことです。

稲田:キャリアコンサルタントをしていると「あなたの強みは、市場価値として考えるとこうですよ」「次はこういう会社にいくともっとスキルを伸ばせますよ」といった、人材市場や外部から見た視点でのご提案はできるのですが、ご本人の好き嫌いややりたいと思っていることはカウンセラーには分からない。だからこそ、ご自身の気持ちを大切にしていただきたいと思っています。そういった感情や思いの部分をご本人がしっかりと持っていて、そのうえでコンサルタントから外部視点でアドバイスを得て、そこがうまく合致したときに1番いい結果になると思います。


渡辺さん:私たちの会社では、相談に来てくださった方のキャリアビジョンづくりに時間をかけています。キャリア面談でキャリアビジョンを一緒に整理するのはもちろんのこと、キャリアセミナーや面接を通して、こういうことやりたかったんだとか、こういう会社で経験を積みたいとか、ご自身の感情に気づいていただくことを大切にしています。

少し話がズレますが、WillとCanが出たのでお話すると、「得意と好きのどちらを仕事にするべきか」という議論をよく見かけます。これについては、私は時間軸の置き方で結論は変わると思っています。短期的に、今すぐお金を稼ぐには得意なことをするほうがいいでしょう。一方、長期的なスパンで考えるのであれば好きなことは得意にもなりやすいですので、結果的に好きを仕事にした方がうまくいくことが多いでしょう


――次の1歩は、「小さく試す」ことから


稲田:ワーキングママが転職先を選ぶ際にはさらに“働きやすさ“というファクターも入ってきます。どこに優先順位をおくべきか決めるためにも時間軸を意識することが大切です。子どもはあっという間に見違えるように成長していきます。子どもに手がかかるのは、この先ずっとじゃない。長いスパンで働き続けたいと思っているのであれば、今この瞬間に焦らなくていい


渡辺さん:今はそういう時期だと割り切ることも大事ですね。ちゃんと子育てしたい、でも収入も上げたいと、目先で最大限のリターンを得ようとすると、それはやっぱり難しい時期もあります。何もかもをこの瞬間に手に入れようとするから混乱してしまう。育児がもっともハードな時期が終わって少し自分の時間ができて、やりたいことと現状にギャップを感じるのであれば、たとえばまずはボランティアや副業から経験を積み始めてもいいと思います。ゴールに向けた経験を得られる環境って、報酬も含めた制約要件を外せば意外と多くあるものです。いきなり転職したり、起業したり、何かを大きく変えなくても、小さく試すことから学べることもたくさんあるでしょう

稲田:そうですね。自分の理想に近い仕事をしている方に話を聞いてみたり、興味のあるセミナーに参加してみたり、情報を取りにいくことから始めてもいいかもしれません。ワーキングママのみなさんには、ぜひ長期的な視点でご自身のキャリアに向き合いながら、理想のキャリアをかなえるための小さな1歩を踏み出していただけたらと思います。渡辺さん、本日はありがとうございました。

 


★渡辺さんからのメッセージ★


・これから自分の好きな領域で力をつけようとしている方へ
好きなことを仕事にするために、どのような経験を積んでどのような力をつけていくべきか、ご自身のキャリアを長期的なスパンで考えてみましょう。キャリアのゴールに向けて必要なステップであれば、一時的な減収や会社の知名度が低いことを気にせず、選択することも1つの手です。そこで身につけたスキルが将来資産となり、最終的に自分の働き方を自由にしてくれます。


・すでに自分の好きな領域でキャリアを積み、力をつけてきた方へ
もし働いている環境に不満があれば、ぜひキャリアコンサルタントに相談を。今は人材市場が発展しているので、企業側と交渉できる状況になっています。現在のライフスタイルに合った環境を探してみましょう。また、起業も有力な選択肢です。


・育児に奮闘するすべての方へ
時間のやりくりが大変な時期なので、すべてを自分でまかなおうとせず、積極的に外部の手も借りて育児とキャリアの両立を目指しましょう。


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