プロジェクトリーダーや管理職などの責任を負う仕事は任せられないと思うのですが…。

Q.全体を管理するプロジェクトリーダーや管理職などの責任を負う仕事をワーキングママに任せるのは難しいですよね。子どもの病気などを理由に休みが続く可能性もあると思うので…。
A.昭和のリーダー観を押しつけないで。ワーキングママがリーダーだからこそ生まれるメリットも
ただでさえ仕事と家庭のやりくりが大変そうなワーキングママが、リーダーや管理職をやり切れるのか。答えは、「できる」です。実は時間的な制約がある人材と、裁量のあるリーダーや管理職との相性はいいんです。マネジメント職は、自分で仕事の優先順位を決めることができますし、取捨選択してムダな仕事を減らすこともできます。自分が手を動かすというよりも、メンバーにタスクを振り分けて、チームで最終的な成果を出すのがゴール。上司の意向に沿ってプレイヤーとして仕事をするよりも、業務を俯瞰して効率よく立ち回ることも可能です。ワーキングママ自身の家庭との両立の工夫や在宅勤務などの制度によって、子どもの病気で休みが続くような場合も仕事を進められます。
ただ、会社が求めるリーダーや管理職像が、「常に職場にいて、惜しみなく時間外労働をする昭和の企業戦士タイプ」のような場合は、ワーキングママには難しいでしょう。ワーキングママがマネジメントをやりたがらないという声も多く聞きますが、こんなリーダー像を求められては困るので、手を挙げない気持ちも分かります。しかし今の時代に求められるのは、昭和の企業戦士タイプのリーダーではないはず。下記<事例1、2>のように、能力的にリーダーや管理職ができるママに思い切って任せれば、期待に応えようとがんばってくれるでしょう。
時間的な制約があるワーキングママがリーダーだからこそ、自身を含む突発的なメンバーの不在に対するリスクマネジメントへの意識が高く、業務フローの脱属人化が進み、安定した成果や部下の成長につながるのではないでしょうか。上司が残業しているから帰りにくい…といった余計な残業も減るでしょう。こういう働き方が、今後の人材獲得にもプラスになるはずです。
<事例1>
A・Hさん(36歳)広告業界の法人営業/お子さんの年齢:3歳、0歳9カ月
プロジェクトリーダーを経験したときは、チームで私だけが時短勤務だったので、メンバーとのコミュニケーションの取り方を工夫して乗り越えました。ほかのメンバーは遅い出社、残業が当たり前。全員がそろう進捗報告会議は月1回で、そのほかのやり取りはメールが基本。日中は会議続きでなかなか対面でコミュニケーションが取れない。このままではちょっとした問題が起きただけでも、コミュニケーション不足によってすぐギスギスした雰囲気になってしまうと懸念したので、毎日数分でもいいのでメンバーと対面で話し、不安を取り除くように気を配りました。リーダーとして1番大事なのは、みんなに助けてもらっているという謙虚な姿勢。メンバーのアクションに対しては、必ず感謝を伝えてから意見を言うよう心がけていました。
<事例2>
E・Kさん(34歳)建設業界のエンジニア/お子さんの年齢:3歳、0歳11カ月
復職1年後に時短勤務の状態で、若手、中堅、シニアと多様なメンバーがいるチームでリーダーを任されました。子どもの病欠や保育園の呼び出しに備えて、事前に夫と、どの日はどちらが対応するか決めていたので連続して休むことはありませんでした。懸案事項は小さなことでもメンバーと共有。社内システムに、自宅PCやスマホからもアクセスできたので、保育園から急な呼び出しがあっても、移動中に引き継ぎ依頼をしたり、自宅からも問い合わせに返答しました。チームメンバーだったときと比べて、プロジェクトを俯瞰できたので、メンバーそれぞれのスキルを踏まえた業務配分をすることで、全体の作業時間を短縮したり、最短で成果につながる工夫がもできました。小さなプロジェクトでしたが、この経験は自信につながりました。
POINT
★実はワーキングママと、裁量性が高いリーダー・管理職の相性はいい
★昭和の企業戦士リーダーだけがリーダーではない
★時間的な制約があるリーダー・管理職だからこそ生まれるメリットがある

私が答えます
株式会社mog代表取締役社長 稲田明恵
大手人材会社にて、人材紹介の法人営業を経験後、20代で事業責任者として新規事業の立ち上げを経験。その後、人事マネージャーとして人事労務の運用、研修・採用領域を担当。第1子の出産を機に、業界初のワーママ向けボランティアマッチング事業を展開。2019年、株式会社mogを設立